
金価格は上昇を続け、前回のレポート以降、新たな史上最高値を記録している。本日のレポートでは、まず米政府閉鎖の可能性が市場に与える影響、そして金曜日に発表予定の米雇用統計について検討する。最後に、金の⽇足チャートを用いたテクニカル分析を行い、全体像を整理する。
米政府閉鎖の懸念
米政府は明日にも閉鎖される可能性がある。トランプ大統領と議会指導部が月曜の土壇場で合意に至らなかったことで、政府閉鎖まで15時間を切った状況だ。会談が決裂した後、ヴァンス副大統領は「民主党が正しいことをしないため、政府閉鎖に向かっていると思う」と述べ、民主党が共和党の要請した短期的な合意案(11月21日までのつなぎ予算)を拒否したことを批判した。なお、政府閉鎖が起きれば過去14回目となる。
当社の見解として、政府閉鎖が即座に市場へ大きな影響を与えるとは考えにくい。しかし、今回の閉鎖は短期的に解決されない懸念があり、長期化する可能性がある。ユーロニュースによれば、政府閉鎖が長期化した場合、1週間ごとに四半期GDP成長率が0.1%〜0.3%押し下げられる可能性があり、米経済に深刻な影響を及ぼす恐れがある。そのため、閉鎖が現実となれば、不確実性と市場のボラティリティ上昇によって、安全資産である金への資金流入が加速する可能性が高い。
結論として、民主党と共和党が合意できず、たとえ暫定的なものであっても合意が成立しない場合、米政府は閉鎖される可能性が高い。その場合、合意に向けて具体的な進展が見られない日が続くほど、金価格は上昇基調を強めるだろう。一方、もし合意が成立すれば、一時的に金から資金が流出し、価格が下落する可能性もある。
今週の米雇用統計
米雇用統計は金曜日に発表予定であり、例年通り市場参加者の大きな注目を集めるとみられる。市場予想では、非農業部門雇用者数(NFP)は3.9万人、失業率は4.3%で横ばいとされている。NFPが前月から若干改善すればドルを支える可能性がある。しかし、より大局的に見れば、3.9万人という数字は依然として労働市場の緩みを示しており、失業率が4.3%にとどまるとしても、雇用市場の健全性に対する懸念が強まる可能性がある。この場合、ドルには下押し圧力がかかり、逆相関の関係にある金価格を押し上げる可能性がある。
さらに、前述の通り米政府が明日閉鎖される可能性があり、それに伴い雇用統計の発表が遅延する可能性もある。もし統計発表が遅れれば、市場は雇用市場の現状を巡る憶測と懸念を強め、ドルに悪影響を及ぼし、金を支える展開になり得る。
テクニカル分析

サポート:3740 (S1), 3620 (S2), 3500 (S3)
レジスタンス:3860 (R1), 3980 (R2), 4100 (R3)
金価格(XAU/USD)は上昇基調を維持している。当社は強気の見通しを採用する。その根拠のひとつがRSI指標で、現在70を上回っており、強い強気の市場センチメントを示している。ただし、70超は買われすぎ水準を示すこともあり、一時的な調整が入る可能性もある。
横ばいシナリオ:3740ドル(S1)〜3860ドル(R1)のレンジ内にとどまる場合は、もみ合いの展開となる。
強気シナリオ:3860ドル(R1)のレジスタンスを明確に突破すれば、次の上値目標は3980ドル(R2)となる。
弱気シナリオ:3740ドル(S1)のサポートを下抜けた場合、次の下値目標は3620ドル(S2)となる。
IronFX上級リサーチアナリスト
ピーター・ヨシフ
公認会計士(ACA)、ICAEW会員