
週初め以降、金価格は下落していますが、先週の上昇分をすべて失ったわけではありません。本日のレポートでは、ロシアとウクライナの最新の和平交渉の動向に焦点を当てるとともに、本日発表予定の米国雇用統計、そしてベネズエラを巡る緊張の進展についても触れていきます。あわせて、より包括的な視点を提供するため、金の4時間足チャートのテクニカル分析も行います。
ウクライナ・ロシア:和平交渉は進展しているのか?
複数のメディアによると、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、両国が戦争終結に向けた外交的解決の「瀬戸際」にあると発言しました。さらにABCニュースによれば、**米政権関係者は匿名を条件に「両国間の問題の文字通り90%が解決された」**と語り、和平合意がこれまでで最も近づいている可能性を示唆しています。
また、POLITICOによると、米国はウクライナに対し、NATO非加盟のままでもNATO並みの安全保障を提供する提案を行っているとされています。この合意案は、米国からの安全保障を得る代わりに、ウクライナが一部領土の譲歩を迫られる可能性がある構造となっており、これはウクライナが長らく求めてきたものでもあります。そのため、この提案はウクライナにとって米国からの安全保障を得る最良の機会と受け止められ、両国を合意へと近づける可能性があります。
このように和平合意成立の可能性が高まったことを受け、安全資産である金から資金が流出し、金価格の重しとなった可能性があります。ただし、実際に合意文書が署名されるまでは懐疑的であるべきであり、現段階での楽観視は禁物です。
米国雇用統計が本日発表予定
11月の米国雇用統計は本日発表予定です。非農業部門雇用者数(NFP)は4万人増と予想されており、前回の11万9千人増から大きく減少し、労働市場の緩和を示す可能性があります。また、失業率は4.4%で横ばい、平均時給の伸び率は3.8%から3.6%へ減速すると見込まれています。
全体的な見通しとしては、米国の労働市場がさらに冷え込む方向を示唆しています。仮に、実際の結果が予想以上の減速を示した場合、FRBに対する金融緩和継続圧力が強まり、ドル安要因となる可能性があり、その結果、ドルと逆相関の関係にある金価格を押し上げる可能性があります。
一方で、雇用市場の底堅さが示された場合には、ドルが上昇し、金価格は下押し圧力を受けるという、逆の展開となる可能性もあります。
ベネズエラ情勢も金価格に影響を与える可能性
米国の裏庭とも言えるベネズエラ情勢にも依然として注意が必要です。特に、トランプ大統領が「地上攻撃は間もなく始まる」と発言した点に注目しており、軍事的エスカレーションの可能性、さらには米国によるベネズエラ領内への空爆の可能性も示唆されています。
また、ベネズエラの経済的生命線である石油輸出を遮断しようとする圧力が続く中、国内あるいは外部勢力による衝突が近づいている可能性もあります。ただし、金価格に大きな影響を与えるには、米国とベネズエラの直接的な軍事衝突が必要と考えられます。そのような事態が起きない限り、金価格への影響は限定的にとどまる可能性があります。
テクニカル分析

サポート:4240 (S1),4170 (S2),4110 (S3)
レジスタンス:4320 (R1), 4380 (R2), 4450 (R3)
ゴールドはレンジ相場継続、ブレイク待ち。
前回レポート以降、金価格は1トロイオンス=4,300ドルを突破し、4,320ドル(R1)を一時的に上回ったものの、その後反落しています。チャート下部の指標を見ると、MACDおよびADX+DIが弱気の市場センチメントを示していることから、金価格に対して弱気見通しを採用します。
また、RSIは70超から50付近まで低下しており、これまで価格を押し上げてきた強気の勢いが後退していることを示唆しています。
強気シナリオ:
4,320ドル(R1)を明確に上抜けた場合、次の上値目標は4,380ドル(R2)。
弱気シナリオ:
4,240ドル(S1)を明確に下抜けた場合、次の下値目標は4,170ドル(S2)。
レンジ(横ばい)シナリオ:
価格が**4,240ドル(S1)~4,320ドル(R1)**の範囲にとどまる場合。
IronFX上級リサーチアナリスト
ピーター・ヨシフ
公認会計士(ACA)、ICAEW会員


