
金は約3,510ドルと、新たな史上最高値を形成しました。本レポートでは、米連邦準備制度(FRB)の独立性を巡る議論、ベネズエラと米国の緊張、今週発表予定の米雇用統計、金ETFの資金流入動向を取り上げ、最後に金のテクニカル分析を行います。
FRBの独立性への懸念が続く
FRBの独立性を巡る問題は、先週トランプ大統領がFRB理事リサ・クック氏を罷免する書簡を発表したことから始まりました。この件は裁判に持ち込まれ、ジア・コブ判事が双方に本日までに主張を提出するよう求めています。
さらに、ECBのシュナーベル理事は「もしFRBの独立性が失われれば(そうならないことを強く願うが)、世界金融システムに極めて大きな混乱をもたらすだろう」と述べたとロイターが報じています。これは、FRBが「独立」を失うリスクに対する政策当局者の世界的な懸念を浮き彫りにしました。
次回のFRB金融政策会合が迫るなか、この不透明感が続けば、安全資産である金に資金が流入するリスクが高まると考えられます。
ベネズエラと米国の緊張
南カリブ海での米軍の展開強化、とりわけベネズエラ近海での動きにより、両国の緊張が高まっています。マドゥロ大統領は「米国は政権交代を狙っており、我々は過去100年で最大の脅威に直面している」「もし攻撃されれば『武装共和国』を宣言する」と強い警告を発しました。
一方、米国側は「麻薬密輸対策の一環」と主張しています。さらに、国境を接するガイアナは「選挙関係者を乗せた船がベネズエラ側から銃撃を受けた」と主張しましたが、ベネズエラはこれを否定しています。
仮に地域で軍事衝突が発生すれば、地政学的リスクの高まりによって金価格を押し上げる可能性があります。
米雇用統計
米国の8月雇用統計は今週金曜日に発表予定です。注目点は失業率で、4.2%から4.3%に上昇する見込みです。これは労働市場の緩和を示すもので、FRBへの利下げ圧力を強め、ドルを押し下げる一方で金価格を押し上げる可能性があります。
したがって、失業率が4.3%以上となれば金価格に追い風となり、逆に予想を下回れば金にとって逆風となる可能性があります。
金ETFへの資金流入
世界金評議会(WGC)の最新レポートによると、金ETFは4月中旬以来最も強い資金流入を記録しました。これは「FRBが今月の会合で利下げする可能性」への楽観的な見方が背景にあります。今後も資金流入が続けば、金価格をさらに押し上げる要因となり得ます。
テクニカル分析

サポート:3385 (S1), 3240 (S2), 3115 (S3)
レジスタンス:3500 (R1), 3645 (R2), 3790 (R3)
XAU/USDは3,500ドル(R1)の史上最高値抵抗線に達した後、上昇基調を見せています。RSIは70近辺を示し、強い強気の市場センチメントを示唆しており、MACDも上昇を支持しています。ただし、短期的には一時的な調整も想定されます。
強気シナリオ:3,500ドル(R1)を明確に突破 → 次の目標は3,645ドル(R2)
レンジシナリオ:3,385ドル(S1)~3,500ドル(R1)の範囲内で推移
弱気シナリオ:3,385ドル(S1)を明確に割り込む → 次の下値目標は3,240ドル(S2)
IronFX上級リサーチアナリスト
ピーター・ヨシフ
公認会計士(ACA)、ICAEW会員