
前回のレポート以降、金価格はやや上昇したものの、市場は依然として強気に押し上げることにためらいを見せているようです。本レポートでは、現在の金価格の方向性を左右する主要要因とされる「市場のFRBへの期待」「金価格に影響する可能性のある経済指標」「現在の金とドルの逆相関の有効性」「地政学リスク」について整理し、金のデイリーチャートのテクニカル分析を併せて提供します。
FRBへの市場の期待
前回のレポート以降、FRBに対する市場期待は劇的に変化しました。先週まで、市場は12月会合でFRBが「据え置き」を選択すると見ていました。しかし現在、Fed Fund Futures は 73%の確率で12月の利下げを織り込みつつあります。この見方の転換は、NY連銀総裁ウィリアムズが金利が「近い将来」低下する可能性に言及したことが影響しています。一方で、カンザスシティ連銀のシュミッド総裁などタカ派メンバーは依然として金利据え置きを主張しています。なお、12月10日のFOMCに向けてFRBはブラックアウト期間に入るため、関係者の発言は今後減少する見通しです。
金価格に影響し得る経済指標
金トレーダーが特に注目するのは「インフレ指標」と「雇用指標」です。これらはFRBの判断に大きく影響するためです。
米GDP(7-9月期)改定値:景気減速が明確になれば不透明感が高まり、金価格を支える材料となり得る
米PPI(生産者物価指数):インフレの先行指標
ADP雇用統計(週間):雇用の動向
米PCE(個人消費支出)物価指数:FRBが最も重視するインフレ指標(最大の注目)
→ 予想より強い結果なら金価格を押し下げ、弱い結果なら押し上げる可能性
地政学リスク要因
金価格は安全資産として地政学リスクの影響を受けやすいため、以下の動きにも注意が必要です。
1. 米中関係の改善
トランプ大統領と習近平国家主席の電話会談を受けて関係改善が進んでおり、トランプ大統領は来春に中国訪問予定と報じられています。市場不安が後退すれば 金価格には下押し圧力
2. ウクライナ和平協議
米・EU・ウクライナ・ロシアの4者協議が必要であり難航しているが、合意が実現すれば、金価格の下落要因
逆に戦争の長期化・激化(例:NATO軍の正式投入など)は、金価格の上昇要因
3. ベネズエラ情勢
米国がマドゥロ大統領をテロ組織関係者に分類。これは軍事行動の可能性も含め新たな緊張を招く可能性がある。緊張増、金価格を押し上げる可能性
金と米ドルの逆相関は現在機能していない
通常、金価格と米ドルは逆相関の関係があります。しかし最近は、逆相関はほぼ無効化していると言えます。
- 金価格:横ばい
- USD指数:上昇
- 米金利:低下(通常は金の支援材料だが影響は限定的)
テクニカル分析

サポート:3980 (S1), 3615 (S2), 3450 (S3)
レジスタンス:4155 (R1), 4380 (R2), 4600 (R3)
昨日の金価格は上昇し、4155(R1) のレジスタンスで頭打ちとなりました。RSI:50付近で方向感に欠ける。ボリンジャーバンド:広がらず、強いトレンド発生を示唆せず、当面はレンジ相場の可能性が高い
想定レンジ(サイドウェイ)➡ 4155(R1)〜3980(S1)
強気シナリオ(Bullish)4155(R1)を明確に上抜く。次のターゲットは 4380(R2)=史上最高値
弱気シナリオ(Bearish)、3980(S1)を下抜く。次のターゲットは 3615(S2)
IronFX上級リサーチアナリスト
ピーター・ヨシフ
公認会計士(ACA)、ICAEW会員




